THINK H.L.N.A

2014/12/24(Wed) 09:58

YujiroTsuji Grand Champion Special Interview.

生見海岸でサーフィンを始め、日本を代表する良質な河口やリーフで基礎を培い、海外での経験を得てサーファーとしての実力を磨いていった。そして今年、ついに日本の頂点に君臨。それでも満足を覚えることはなく、目指す頂きはここではないと、辻裕次郎は海の向こうへ視線を送る。

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辻裕次郎

四国・生見海岸でサーフィンをスタート。波の豊富な四国で腕を磨き、小学6年生で冬のノースショアを経験する。16歳でプロへ転向し、17歳で海外の試合を転戦する生活へ入る。2011年にはスコットランドでのWQS 6スターで9位入賞を果たすなど海外での実績も豊富。そして2014年シーズン、JPSA(日本プロサーフィン連盟)のグランドチャンピオンを獲得した。公式サイト:http://yujirotsuji.com/

H.L.N.A:もうだいぶインタビューは受けたのかな?

 辻裕次郎(以下、辻):サーフィンライフやFプラス、プジョーが出している雑誌、徳島新聞やNHKからも受けました。

H.L.N.ANHKは番組?

辻:ニュース番組のなかの、その日のいくつかの出来事をダイジェスト的に取り上げていくコーナーでした。

H.L.N.A:グランドチャンピオンの注目度は違うということだね。ところでプロになって何年目の出来事なのかな?

辻:13年目です。

H.L.N.A:今は29歳だから、16歳でプロ?

辻:はい、そうです。

H.L.N.A:だいぶ早くにプロへ転向したけれど、日本チャンピオンまでの13年というのは?

辻:なんか、13年という数字だけを聞いたらそんなに長い感じはしませんけど、プロになって何年という感じで気にしたことがなかったから、けっこう長い気もしますね。

H.L.N.A:とはいえ、国内のタイトルを取ろうと思ってやってきたわけじゃないものね?

辻:違いますね。今年にしてもビーチハウス(※地元の徳島県海陽町にオープンした宿泊できるゲストルーム付きのサーフスタイルショップ)をオープンしたり、経済的にも時間的にも、海外の試合を転戦するための条件がそれほど良い状況ではなかったから、中途半端に行くくらいなら日本の試合にフォーカスして、来年また行けばいいと考えたんです。

H.L.N.A:結果、日本のチャンピオンになった。心境はどう?

辻:個人的には何も変わった感じはないですね。忙しくなったというのはあるけど(笑)

H.L.N.A:日本チャンピオンに抱いていたイメージは?

辻:あったらいいとは思うけど、自分が現役を終えるまでに取りたいという気持ちもそれほど強くはなくて。とりあえず今は海外のWQSで優勝することが目標だから、特に日本のタイトルを目指してということはなかったですね。

H.L.N.A:海外志向のきっかけというのは?

辻:自然に生まれてきた感じですね。地元の四国でも、特にJPSAを何戦もやるような環境ではないし。それよりは(田嶋)鉄兵くんや(田中)樹くんといった、海外の試合をまわっている先輩の姿を見ていたことが影響としては大きかったように思います。一緒に連れていってもらったりもしましたから。

H.L.N.A:さらにその上の世代は、まず国内でJPSAのタイトルを取ってから海外へ、という流れがあったよね。

辻:そうですね。そういうスタンスについては、今は個人によって変わる時代だと思います。仲村拓久未とかは日本でトップになってから世界は出るという内容のインタビューをしてましたし。僕の場合、あまり誰がどうしているから、ということは気にしてませんでした。海外の試合を意識しはじめた頃は哲(浦山哲也)さんや牛越(峰統)さんたちがいて、数年後にマー(大野修聖)くん、鉄兵くんや樹くんが本格的に転戦をはじめました。そのような流れに、自然と僕も乗って行ったという感じなんです。

yujiro tsuji_Q2H5539.JPGPhoto:Sadahiko Yamamoto

H.L.N.A:スポンサーからのアドバイスは何かあったの?

辻:公平さん(※303サーフボード主宰者)は何も言いませんでした。今年もずっとレイティングはトップでしたけど、別にチャンピオンになることを求めてきたわけでもないですし。終盤になって、「一度は取っておいた方がいいんじゃないか」という声がいろんな人から聞こえだした程度ですね。でもそれで気持ちが変わったとかそういうのは特になくて、僕自身も、まぁ取れたらいいなっていうくらいでした。

H.L.N.A:試合には負けたくない、といった気持ちでのぞんだ結果ということなのかな。

辻:そうですね。ただ、チャンピオン争いという経験ができたことは、今後につながると感じています。それと海外を転戦する資金も得られたので、来年は日本の大会もまわりつつ、海外の出たい試合には優先して出場していきたいですね。

H.L.N.A:海外の試合でのモチベーションは?

辻:海外の試合で勝った方が、自分のなかで価値が大きい。それだけですね。

H.L.N.A:海外の試合をまわることで世界に触れている裕次郎にとって、日本はどう見えているの?

辻:キッズの実力は伸びてきてますね。ジュニアの大会でファイナルに残る選手もいますから。ただWQSを転戦した時に結果を出せるかどうかという点では、海外の選手の方が成長スピードは速いように思います。

H.L.N.A:そうなる理由はどこにあるんだろう?

辻:難しいけど、ナイーブな日本人はサーファーとして完成するのが早いのかもしれません。でも、実際には考えすぎる部分もあるのかな。どちらかはよく分かりませんけれど、海外のサーファーは、極端にいえばあんまり考えていない。負ければ気にはするけれど、切り替えの仕方が違うように接していて感じる時がありますね。たとえ上手くても、結果が出なければスポンサーに切られる、というシビアさも違います。サーフィンを続けられるかどうかという部分で、常にリスクを背負っている。だから海外に出なくても切られづらい日本人と比べると、メンタルが強いような気がします。でも、海外へ出たくなければそれでいいんだとも思います。世界で戦いたいう奴は放っておいても出ていくだろうし、それくらいの強い気持ちがないと厳しい状況に対応できませんから。

H.L.N.A:刺激は海外の方にあるという印象?

辻:時間もお金も体力も使うし、異国で負けることは日本以上に精神的に厳しいけれど、吸収できることは大きい。勝ったらすごい嬉しいですしね。単純に、日本で勝つより海外で勝つ方が難しい。やりがいはありますよ。もちろん日本も良くなってきているけれど、日本が世界のトップではないのは現実ですし。

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H.L.N.A:なるほど。ただJPSAにもいい波でやろうという意識を感じるけれど。

辻:そうですね。でも、偉そうかもしれないけれど雰囲気がアットホームすぎます。選手がもっと厳しい意見をいわないと良くはならないかな。選手が身を削ってまで勝利を狙いにいくという環境にはならないと思います。

H.L.N.A:選手として要求したいことはある?

辻:根本的なこととして、もっと真剣に選手のことを考えて欲しいと思います。消化試合とかも多いし、波数が少ないコンディションでも試合をしたりというあたりをうまく運営してもらえるといいですよね。

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H.L.N.A:台風の影響から途中でキャンセルして、後日改めておこなった伊良湖での第3戦(夢屋サーフィンゲームス 田原オープン)についてはどう思う?

辻:台風でメインの試合会場がクローズアウトしても先端というポイントをおさえていればキャンセルせずに済んだはずなんです。実際、キャンセルした日はずっといい波だったんですから。なぜ事前におさえていなかったのか理由は分かりませんけど、試合のできる場所があるにも関わらず、クローズ気味のビーチで試合をしたり、改めて伊良湖へ行くようなことになってしまった。スケジュール的にも、鴨川の試合の後は1週間ブレイクが取れるタイミングだったところを、旅費と時間というコストをかけて試合をしにいくことになった。もしあらゆる可能性を考えて、「台風が来たら」という仮説を前提に運営することができたら、選手にも運営サイドにも負担の少ない状況になっていましたよね。

H.L.N.A:鴨川の試合も最後は、ほぼクローズアウトだったね。

辻:ジェットスキーくらいは出せるだろうと、そう思いたくなるほどウィメンズのファイナルは厳しいコンディションでした。そういうサポート体制やお金の使い方が海外の試合と比べると違うなって思うし、もし様々な判断を含め、運営サイドの意向がもっと透明になれば、選手としても建設的な意見を言いやすいですよね。 

3.JPGPhoto:Sadahiko Yamamoto

H.L.N.A:大会運営を含め、日本のサーフ環境をもっと発展させていくうえで、海外に学ぶべきところはあるのかな?

辻:日本の場合、サーファーはサーファーで固まってしまうところを改善していった方がいいと思います。楽なのは分かるし、でも面倒くさがらずに他の業界の人と接点を持つことは大切ですよね。それだけ世界観が広がりますから。いろんな角度でサーフィンをアピールできるチャンスを逃さない努力が必要だと感じるし、広めていきたいですよね。

H.L.N.A:試合以外でのプロ活動をもっとするべき、ということだね。

辻:ナオ(小川直久)さんはテレビにも出ていましたしね。どう絡んでいけばいいのかは難しいところですけど、アプローチする努力はしていきたいと思います。ただ今の最優先は海外の試合で勝つこと。そして地元にオープンしたビーチハウスの運営を軌道に乗せることです。

H.L.N.A:サーフィンは試合だけじゃないよね。今、試合とそれ以外と、裕次郎のサーフィンはどのような比率になっているの?

辻:8割が試合ですね。もっとフリーサーフの割合をあげていきたいけど、コンテストは待ってくれないし、ほぼ1年中休みがない状況ですから。オフの時にはゆっくりして、サーフィンも自由にやりたいけど、なかなか時間を取るのは難しいですね。

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H.L.N.A:今はコンテストモードのスイッチを入れている感じ?

辻:そうですね、スイッチを入れざるをえない感じです。

H.L.N.A:その比重を今後はこう変えていきたいという願望はある?

辻:幸い僕のスポンサーはそんなにコンテストにこだわっているわけではないので、どこかのタイミングでフリーサーファーというカテゴリーが日本でも確立する動きをしていきたいですね。コンテストサーファーだけではなく、フリーサーファーによってサーフボードやウエアが売れるという経済的にも効果をもたらす存在になりたいかな。ただコンテストも楽しいですよ。海外のまだ日本人が勝っていない試合で優勝する。そういう醍醐味が試合にはあるし、誰もが知っているような有名な選手に勝ったりという納得する結果を残していきたいという目標もあるんで。

H.L.N.A:海外の試合は良い波、大きな波でおこなうことが多いよね。小さな波を中心にしたツアーで年間王者を競うよりは、サイズも様々、形状も様々、というツアーで実力を競い合いたいという気持ちはある?

辻:ありますね。その点で日本は偏っているかもしれませんね。1戦目にパリのグラマス、2戦目に和歌山のリーフブレイク、3戦目に四国の河口、4戦目に仙台新港のグランドスウェル、というスケジューリングが組まれたら、トップの顔ぶれはまったく変わると思います。そうすればビッグウェイブをメインにやってるサーファーも出てくると思うし。今年の波は確かによかったけど、これまでJPSAのイメージは、ヒザからコシの波で上手いサーファーが日本のチャンピオンというイメージがあったとも思うし、それは絶対に違うと思うから。それはヒザ・コシの波が日本一上手いサーファーにすぎないですよね。本当に日本一なら、多彩な波を詰め込んだツアーにすべき。そもそもチューブがひとつもないツアーが今のJPSA。チューブもあってビッグウェイブも小波もあってというツアーで勝つサーファーが本当にオールラウンダーだし、そういうツアーでもまれた方が、海外へ行った時も困ることは少ないと思う。

H.L.N.A:では最後に、H.L.N.Aのライダーとして、H.L.N.Aでやりたいことは何かある?

辻:協力できることがあれば何でもやりたいですよ(笑) 台場のダイバーシティ東京プラザにあるスケートパークみたいに、東京にウェイブプールができたら最高です。あと、サーファーは海へ来てもらわないと見てもらえないから、海へ来てもらわなくてもサーファーといろんな人が接点を持てるようなプロジェクトがあれば、積極的に参加したいと思います。

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Posted by:H.L.N.A staff