THINK H.L.N.A

2016/2/29(Mon) 18:11

HAROSHIインタビュー「大阪 EXPOCITY 巨大アートピース製作について語る」

HAROSHIインタビュー

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昨年11月にオープンした大阪EXPOCITYのH.L.N.Aゾーン1Fエリアにあるスケートボードデッキの廃材を使った巨大なアートピース。この製作を手がけたのは国内はもとより、海外でもその名を広く知られているHAROSHI(ハロシ)。今回はこれまで大きなベールに包まれていたその作品について、本人の独占インタビューを通じてクローズアップします。

Photos: Jason Halayko (Osaka Expocity)

Special Thanks: HHH Gallery(http://hhhgallery.com/)

H.L.N.A:ハロシさんは現在、アメリカでのアート活動を主にやられているのですか? 

HAROSHI:そうですね、いまは日本よりはアメリカを中心に仕事している感じです。6年ぐらい前からニューヨークのジョナサン・レバイン・ギャラリーというところに所属して、そこで2年に一度ほどショーをやるサイクルになっています。

H.L.N.A:キース・ハフナゲル(HUF)との繋がりもあるんですよね?

HAROSHI:はい。以前、東京・青山でショーをやったんですけど、その評判がとても良く、それから色々と状況が変わっていきました。キースは僕の作品を気に入ってくれたみたいで、ショーの後に「今度何か一緒にやりたいよね」という話になり、一年以上かけてロサンゼルスでのアートショーを開催したんです。

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H.L.N.A:元々はこの辺り(東京都葛飾区)のご出身ですか?

HAROSHI:生まれは横浜で、育ったのは(東京)駒沢公園のあたりです。その後、7年くらい前にここら辺に越して来たんですけど、アメージングスクエアという遊園地の跡地がスケートパークになっていて、そこにバーチカルとかボウルがあり、それが当時僕が一番やりたかったセクションでした。その前に住んでいた横浜では、新横浜のスタジアムの下のパークに通ってたんですけど、やっぱり往復で約一時間はかかったんですよ。でもここだと往復でも10分程で行けるので、それだったら引っ越そうかなと思ったのがきっかけです。

 

H.L.N.A:現在はアーティストとして活動されていますが、ここに至るまでの経緯、バックグランドなどを教えて下さい。

HAROSHI:以前はジュエリーの量産の仕事をやってました。磨いたり、形を綺麗にしたりするのを100個とか200個とか納品していて、何ていうんですかね...、それってすごくストレスフルな作業でした。ちょっとでも形が他と違ったりするとアウトみたいなのがすごい嫌で。その一つ一つが違うのがいいのに、完璧に同じものを求められる作業がロボットみたいでつまらなくなってしまいました。その仕事はしばらくやっていたけど、このままだと気が狂ってしまうから辞めたいな、と思いました。やっぱ自分自身で始めないとコントロールできないなと思い、じゃあ自分でできるもので何か一つ一つが違ってもいいものにしよう、って考えたときに木製のアクセサリーを作り始めました。ツゲの木などでブレスレットを作ってたんですけど、良い木はやっぱりそれなりに高くてお金がかかるんです。そんな時にウチの奥さんが部屋にいっぱいある古いスケボーのデッキを見て「それで作ればいいじゃない」って言いだして、それから作りだしたのがきっかけですね。

 

H.L.N.A:スケートボードやスケートのカルチャーとの出会いはいつでしたか?

HAROSHI:カルチャーとかを別にすると、小学校の時におじいちゃんと一緒に木を切って、それに車輪をつけて遊んでたりしてました。ちゃんと意識したのは中学2年か3年の時。隣の学校の子がスーサイダル・テンデンシーズが好きで、スウェットの切りっぱなしにブロンズエイジのTシャツを着て、バンダナを深く頭に巻いてるようなスタイルだったんですよ。いつもスケボーを持ってて、それが何か「ちょっと格好良いな、僕もスケボーやってみたいな」と思ったのがきっかけです。それが気になっているころに幼なじみが「スケボー始めない?」と誘ってくれました。僕らは駒沢公園が地元なんで、先輩達は結構スケボーやってました。そして誰々のお兄ちゃんに教えてもらおうよ、という感じで自分もスケボーを買いました。

 

H.L.N.A:やっぱりアメリカとか西海岸への憧れはずっとあったんでしょうか?

HAROSHI:うーん、二十歳ぐらいになるまで実はアメリカというものをあまり意識したことがなくて、アメリカのファッションをしている先輩からの影響でしたね。スーサイダルもライブは行ったことがないけど、近所の不良がやっているそのコスプレから入ったみたいな(笑)。当時その先輩達がドッグタウンとかのレアな古着を着ているのを見てドッグタウンを知ったし、エリック・ドレッセンがどんな人かよりも、そのグラフィックのインパクトから入りました。昔、先輩に「おまえアルバとか知らねえだろ」みたいなこと言われて、「"ALVA"っていうトレーナー、ブランドは知ってたけど、アルバはどんな人かは全然知らなくて、誰も教えてくれなかったんです。

 

H.L.N.A:ウェブサイトのプロフィールのところを見させてもらったんですけど、HAROSHIさんのアートは、偶然にも日本の伝統的な仏像の製作工程に通じるところがあるようですね?

HAROSHI:実はそのことに関してはそんなに意識していたわけではないんです。日本の仏像も木造で作られているものが多くあり、寄せ木作りという製法で作られているのですが、やはり大きなものを作るには、同じようなプロセスをたどるんです。僕は別にそれを勉強してきたわけではなく、最初はスケボーの板でできる範囲内のものを作ってきましたが、大きなものを作るにあたっていろいろと考えてみると、日本の仏像を作るやり方と同じなんだな、ということがわかりました。同じ風土でモノを作って、そのプロセスを考えると酷似していくという共通点は自分の中でも面白いと感じました。ただそれまでは日本の彫刻ってダサいなって思ってました。いまはすごく格好良いって思えますが、あの熊が鮭を咥えている置物とかあるじゃないですか? いま見ると興味深いというか。表面をやすってもそれをあえて綺麗にしていない、人が介在したプロセスを残しているのが良いと思えるようになりました。彫刻をやっていくと初めてわかることも多いわけで、そうしていくうちに日本のことも意識せざるを得なくなったという感じです。

 

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H.L.N.A:大阪EXPOCITYのH.L.N.Aゾーンのために製作したアートピースについて聞かせて下さい。まず最初に800枚ものスケートデッキを集めるために、弊社も協力させていただいたのですが、最初はHUFのミドルフィンガーみたいな大きな彫刻ができるのかなと想像してたんですよ。それが今回の形になったのですがそのコンセプトなどあれば教えて下さい。最初はやはりスケッチなどを書いて、粘土などで模型を作るところから始めたのですか?

HAROSHI:はい、まずはスケッチから始め、粘土で小さいものを作りました。僕が聞いていたのはなるべくデカいものを作ってくれということでしたが、実際にはあの大きさになると重くて絶対に持ち上がらないんですよ。一応、天井の高さだけは聞いていたんですけど、中に入らなければ話にならないじゃないですか。あそこには太陽の塔も近くにあるし、どんなにデカいといってもあんなに大きなものは作れない。そこでどうすればいいのかな、と思ってました。


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H.L.N.A:いままで作ったものの中でもあれが一番大きいですか?


HAROSHI:はい、一番大きいです。ただ元々ずっと公共の場に彫刻を置きたいな、とはずっと思っていて、それをやるときには必ずその彫刻の台になるベースの部分にはテーパーを付けて、スケボーが出来るようにしようと考えていました。台から彫刻にかけてアプローチするラインがあれば、普段は人が見ても全然わからなくても夜になるとスケーターが来て遊んだりできたりして、それはとても良いことじゃないですか? あの横浜の大桟橋ホールの通路の壁にある斜面も、すごいRが付いてますよね。あれを作ったのは絶対にスケーターかサーファーだなって(笑)。まあ、ちょっとした彫刻って僕らにとっては何の意味もなさず、ただの予算を使うだけのただのモニュメントになってしまうのなら、スケータブルな(スケートができる)ものにするのが僕らの役割なんじゃないかなと。そういう仕事を与えられたのなら、そこにちょっとずつ角度を付けていけば、僕らの遊び場が必然的に増えるでしょう。これは常設されるものだと聞いていたので、それならセクションにしようと考えました。もちろんそれをやったら怒られるかもしれないけど、Rを付けたらスケボーをやるヤツはやるし、それって普通に世の中にあるもの全部がそうじゃないですか? 最初は彫刻から飛び超すものを考えていたんですが、スペースや天井の配管のことを考えると危ないかなと。形に関してはそういうところから入ったんですね。あと使わなくなったデッキを持って来たらTシャツと交換してあげるというのは、これからもずっとやっていきたいと思ってます。それらのデッキが後にスケーターが実際に遊べるセクションになるということはとても良いサイクルで、双方がWIN-WINというか誰も損をしないし、そうあるべきなんじゃないかなと思います。リサイクルしたデッキで作品を作って、それをスケボーにプリントしたデッキを作り、そのデッキが削れて戻ってきたらまたリサイクルするみたいな。

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H.L.N.A:永遠に続くそのサイクルはこれまで世界中になかったものですね。

HAROSHI:こないだも大阪EXPOCITYの作品を見て、カリフォルニアのスケートパーク&ミュージアムのスケートラボから同じような作品を作ってくれと依頼が来たので、現地に行って話をしてきたところです。あそこには古いヴィンテージのものも含め、何千枚というデッキがあるので、それを現地の小学校の生徒達が課外活動の一環として、デッキテープを剥がす作業をしています。そして手伝ってくれる子供達には代わりにTシャツをプレゼントします。僕が送ったカットデータに沿ってオーナーが中心になってカットし、一日2、3枚の計算で約一年後には約1,000枚になっているので、そうしたら現地に再び行って作品を作る予定です。これってみんなが損しない仕組みになっていて、スケートラボもお金払わなくていいし、これを見て他の人達がいいじゃん、となってみんながやり出したら意義があることかなと。それがいろんなところに出来たら面白いですよね。広い意味で当たり前になっちゃうというか、スケボーでいうフリップみたいな技が出てきて、いまでは誰もができるようになっているみたいな、そのぐらい常識になっているのがいいんじゃないかと思います。

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H.L.N.A:作品の形に込められた意味は?

HAROSHI:いろんな経緯があったんですけど、H.L.N.Aの方からはまずはコンセプトを作って欲しいと言われました。EXPOCITYがある万博公園には岡本太郎が作った太陽の塔があるんですが、そもそも万博のテーマが"進歩と調和"なんですよ。とはいえ(岡本太郎は)アンチの意味であれを作ったって聞いてます。ただ僕にとっては「自然と共存する」ということが大きなテーマなんです。僕はスケーターでサーフィンはしないんですけど、地球の重力の上で仕事しているので、自然と共存することをちゃんと考えないといけないなと。あの作品は最初、押しくらまんじゅうをしている形を考えていました。片方は自然で、片方は人間。それらが押し合いながら、それでもひとつの場所に所狭しといるというのを造形にしようとしてました。ただやっぱり争っている感じはあまり好きではないなあと。どうせならお互いに主張し合いながらも、認め合って人が抱き合っている方がいいですから。あれは上で人が抱き合っているものになっているのですけど、言葉で説明すると難しいですね。スケボーで一番好きなシーンは何回も何回もトライして、やっとメイクした後に、ワーってみんなが走ってきて抱きあうじゃないですか。あの感じです。地球に生まれてしまった以上、僕らもお互いに称え合うことは必要で、ある程度リスペクトを持ちつつ、お互いを大事にすることができれば本当はもっと良くなるのにね、という気持ちがあります。まあ最終的にあの姿になれば、どんなに仲が悪かったとしてもそれでいいじゃんみたいな。すべてにおいて一番大事なものかな、と思って作った感じです。

H.L.N.A:ありがとうございました!


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<プロフ>

HAROSHI(ハロシ)

●  1978年神奈川県出身。東京都在住。スケートボーダー。スケートボードデッキの廃材を使ったオリジナルアートピースを製作し、2004年より日本だけでなく、ニューヨーク、ロサンゼルス、ロンドンなどでショーを開催。その独自の作風は国内以上に海外での評価が非常に高い。2015年3月にはアーティストのUSUGROWらと共に東京都葛飾区にHHH Galleryを立ちあげる。日本では昨年11月にオープンした大阪EXPOCITYのH.L.N.Aゾーン1Fエリアに常設されている巨大なアートピースが大きな話題を呼んでいる。2016年末には東京・渋谷でのショーを開催予定。

http://haroshi.com/



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Posted by:H.L.N.A staff