THINK H.L.N.A

2017/8/10(Thu) 09:50

写真とともに世界を巡り、カルチャーを育む

THINK H.L.N.A #12
RAI SHIZUNO INTERVIEW
志津野雷インタビュー

写真とともに世界を巡り、カルチャーを育む
Photo: Manabu Chiba


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Photos: Manabu Chiba, Manabu Chiba, Ryuya Sano, Miyu Fukada

写真家としてだけでなく、映画館のシネマアミーゴ、また毎年ゴールデンウィークの時期には逗子映画祭をプロデュースするなど、その活動は多岐に渡る志津野雷。仲間と共に逗子をベースにし、波があればサーフィンを楽しみ、そしてカメラを持って世界を旅するという生活を長きに渡り続けている彼に話を聞いた。

H.L.N.A: 最近はどういった活動をしているのですか?
志津野雷(以下、RS):ここ8年くらいは同じ動きをしているんですけど、写真と旅ということで20年間に渡り、カメラを持って世界を廻ってきました。ただそのアウトプットが、写真一枚、紙の一枚になったときに、自分が見てきて感じてきたものとのギャップというか、表現しきれない部分が出てきました。それをもっと立体的に見てもらおうと思ったのがこのシネマアミーゴだったり、逗子映画際の母体でもあるシネマキャラバンという形でした。自分の役割はその代表でもあるんだけど、ずっとここにいては何も生まれないし、世界がどう動いているのかということがわからない。だからそれはまず自分が写真で見いだしていきましょうよ、ということで開拓者的な立ち位置でやらしてもらっています。


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で、実際に映画祭の10日間では何が行われているのか、というとバスク・デイとかインド・デイ、アジア・デイといった区切りがあって、それってただ単にその国をフォーカスしたかったか、というとそうではないんです。まずは写真で旅をして出会いがあり、彼らのロケーションだったり、いろんな文化だったり、そこでのいまある世界の動きみたいなものに直面します。それを持ち帰ってシネマキャラバンや逗子映画祭で来たお客さんにアウトプットの場所として見てもらってます。人を含めて、一日ごとにわかりやすく自らの経験をみんなに共有していこうというのがあります。


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H.L.N.A:具体的にはシネマキャラバンとはどういったイベント、活動なのですか?
RS:シネマキャラバンとは、先ほど言ったように逗子という自分の拠点から初めての旅先へ行ったときに写真家としてはいろんな体験をさせてもらえるんですけど、彼らにはそのお礼が十分にできていないような気がしたんです。向こうからは、波もあるしユニークな食文化もあるから、ぜひ写真を撮ってくれよ、と言われるんですけど、昔はそれこそフィルムで写真を撮っていたからすぐに見せることもできないし、ミュージシャンみたいに即興性はないから、自分の中では常に葛藤がありました。
だったら上映用のスクリーンを持って行き、仲間を連れて行くことで現地の人にも自分のやっていることがより深くわかってもらえ、写真もより深く表現できると考えました。そうすることで旅の厚みも出てくるし、彼らにも新しい仲間を紹介できる。自分の表現場所を旅先にも置くことによって、もっと面白い時間の使い方ができるのかなと。


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H.L.N.A:これまでどんな場所で開催してきたのですか?
RS:それこそ北は北海道、南は九州まで。スペインのサンセバスチャンでは三回やったし、それを見に来てくれたオランダにも行きました。アジアだとインドネシアのジョグジャカルタ。こないだは逗子の映画祭に来たタイの料理人の招きでチェンマイへロケハンに行きました。チェンマイは独自の文化があるのですが、映画館もないし、他のカルチャーを体感する場所がないから、ぜひ映画祭をやってほしいとのことでした。6月に現地に行ってきたばかりなんですけど、そこはどういう場所でどんな仲間がいるのか、そしてどんな文化があるのかをリサーチしてきました。旅から帰ってきてここ(逗子)でまたみんなに報告をして、何をどうやって表現するかをいままさに仲間と話し合っているところです。逗子映画際ではそうやってタイで出会った人たち、インドネシア、バスクで出会った人たちに実際に日本に来てもらって、表現の場を与えています。彼らのとこに行っては呼んで、行っては呼んでの繰り返し。そしてお客さんはぼくらの地元で各国の文化を体験してもらえるシステムになってます。いま日本のメンバーは自分を含め3人で会社をやっていて、コアな仲間は10人くらい。BASEという会社を母体としてシネマアミーゴ、隣のマーケット、旅する映画館のシネマキャラバンと逗子映画際をやっています。


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H.L.N.A:これまで8年にわたり、逗子映画祭をやってきたのですが、今後はどういう展開をしていくのですか?
RS:海岸にスクリーンがあって、みんなで夕陽のあとにビールを片手に映画を見るという一つのアトラクションでもいいんですけど、福島の3/11の事故の後ではいろいろと考えが変わりました。以前も東北に原発の現状を知りに行く旅に行っていたのですが、あの出来事がこれからの自分たちの生活を見直すきっかけになりました。はじめた頃はエンターテインメントとしての映画祭の側面が強かったのですが、3/11以降はホントこのまま楽しい時間を過ごして下さい、というのだけでいいのかなと思うようになりました。それはいま自分が写真を撮るテーマにもなってるのですが、世界がどうなっているのか、日本がどうなっているのか。映画祭の進化としては、そういった現実的な危機感を見せつけられたあとに、我々はどうしていけばいいの、ということを提案できればと思っています。5月の逗子映画祭は、ファッショナブルで面白い人たちがいて、いい音楽が聞けてという場所でいいんですけど、じゃあ彼ら、お客さんがそこから何を持ち帰ってくれるのかということに意識が変わってきています。今年は最終日の5月7日にはじめて自分のフィルムを発表したんですけど、3/11の前と後10年間で自分の中でどう変化が起こったのか、それに元に世界がどういうふうに動いているか。そこでいまバスクやジョグジャカルタにクローズアップし、なぜ彼らが会場にまで来てくれているのかということも言葉で伝えています。全国から来た若者たちも、映画を見た後には地元の育て方や、これからの動き方、旅をすることなどにすごく共感を持って帰ってもらっています。普段の生活の意識を変えることにより、社会のルールに頼らず、自分たちで生きていくすべを見つけてくれればと思っています。

H.L.N.A:最後にこれからの予定を教えてください。
RS:来年も逗子映画祭はやりますし、シネマキャラバンでサンセバスチャンにも行きます。来年の一月はタイのチェンマイでも開催予定です。逗子で8年間にわたり、映画祭をやることによって地元のみんなの意識も変わってきました。毎年10日間で消えてしまう逗子映画祭もいいのですが、今後はここから近い場所に常設したものも作って行きたいとも考えています。

H.L.N.A:今日はありがとうございました。今後の展開も楽しみですね。
RS:ありがとうございます。

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(プロフィール)
志津野 雷(しずのらい)●写真家。1975年神奈川県鎌倉市出身・逗子在住。日本大学芸術学部写真学科卒業。幼い頃より自然に囲まれ、いつしかその尊く美しい様子にファインダーを向け始める。2016年5月にこれまでの活動を集約した写真集「ON THE WATER」を発売。活動の場を国内外に拡げながら、訪れた場所の背景にある文化やそこで暮らす人々に着目し、独自の視点で写真を撮り続けている。ANA機内誌「翼の王国」等の雑誌・広告撮影や、現代美術作家の栗林隆氏、騎馬劇団『ZINGARO』ドキュメンテーションの撮影など、アーティストとのコラボレーション、旅での体験をシェアしていく移動式野外映画館「シネマキャラバン」を主宰するなど、その活動は写真家の域を超えて多岐に渡る。

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Posted by:H.L.N.A staff